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マイコンを用いた組み込みハードウェア開発の流れとポイントについて解説!

スマートフォンから家電、自動車に至るまで、現代のあらゆる電子機器の裏側には「組み込みシステム」が存在します。その中心的な役割を担うのがマイコンです。
当記事では、マイコンを用いた組み込みハードウェア開発の流れとポイントについてご紹介いたします。
マイコンとは?
私たちの生活を支える家電製品や自動車、産業用ロボットなど、あらゆる「組み込み機器」の制御を担っているのが「マイコン」です。マイコンはパソコンに使われるCPUと似ていますが、最大の特徴は、計算を行うCPUだけでなく、データを記憶するメモリや、外部との信号のやり取りを行う入出力機能(I/O)などが、すべて一つの小さなチップの中に集約されている点にあります。
この特性により、マイコンは機器の中に「組み込まれて」特定の機能を実現する「組み込みシステム」の制御に最適化されています。炊飯器の繊細な温度管理から、自動車の複雑なエンジン制御まで、マイコンは組み込み機器の頭脳として多岐にわたる分野で活用されています。
マイコンを用いた組み込みハードウェア開発の流れ
組み込みハードウェア開発は、家電製品や産業機器、IoTデバイスなど、私たちの生活を支える多くの製品に欠かせない技術です。しかし、一度製造されたハードウェアは容易に修正できないため、各工程を確実に進めることが求められます。ここでは、組み込みハードウェア開発における基本的な設計フローをご紹介します。
①:要件定義・仕様策定
組み込みハードウェア開発の起点となる工程です。どのような入力(センサなど)を受け取り、何を出力(表示や制御動作)するのかといった機能仕様を明確化します。また、電源仕様(バッテリー/AC・消費電力)、基板サイズや筐体との整合性、コストなども事前に整理します。ここが曖昧なまま進めると、後の工程すべてで手戻りが発生するため、最も重要なフェーズといえます。
② 部品選定(マイコン選定含む)
策定した仕様に基づき、必要な処理能力や機能を持つマイコンを中心に、周辺デバイスを選定します。I/Oピン数やメモリ容量、通信機能の有無などを考慮し、将来的な拡張性やパフォーマンスとコストのバランスを見極めることが求められます。マイコン選びを誤ると設計全体を見直すことになりかねないため、慎重な判断が必要です。
③ 回路設計
選定した部品同士をどのように接続するかを設計します。単に配線を行うだけでなく、電源の安定化、ノイズ対策、マイコンのピンアサインなど、信頼性に直結する要素を組み込みます。この段階で起こる設計ミスは、後々のデバッグや試作段階で大きな問題として現れるため、丁寧な検証が不可欠です。
④ 基板設計(アートワーク設計)
回路図を基に、プリント基板(PCB)上の配線パターンを設計します。部品の配置や配線の長さ・太さは、ノイズ、電源品質、放熱性などに大きな影響を与えます。また、EMC対策(電磁適合性)の観点からも最適化が求められ、専門的な知識と経験を必要とする工程です。
⑤ 試作・実装
設計した基板データを基板製造業者へ発注し、完成した基板に電子部品を実装します。試作品では、実装工程での改善点や部品形状による誤差なども確認でき、量産に向けた品質向上につながります。少量対応の基板製造サービスの普及により、早期試作がしやすくなっています。
⑥ 動作確認・デバッグ
試作基板に電源を投入し、段階的に動作チェックを行います。まずショートの有無や電源電圧などの安全性を確認し、その後テストプログラムを用いて意図通り動作するか検証します。不具合が見つかれば原因を特定し、設計へフィードバックして改善します。環境要因(温度、ノイズなど)も含めた実機検証が最終品質を左右します。
マイコンを用いた組み込みハードウェア開発におけるポイント
マイコンを中心とした組み込みハードウェア設計では、ソフトウェアと密接に連携しつつ、安定した動作を確保するためにいくつかの重要なポイントがあります。以下に主要なポイントをご紹介いたします。
ポイント①:電源設計とノイズ対策
マイコンは電源品質に敏感であり、電圧変動やノイズの影響で誤動作やリセットが発生することがあります。特にモータやリレーなど大電流負荷が存在する回路では、瞬間的な電圧降下による不安定動作が起きやすいため、十分なデカップリングコンデンサやノイズフィルタの設計が必須です。また、電源ラインのレイアウトやシールド設計も安定動作には欠かせません。
ポイント②:コストと性能の最適バランス
組み込みシステムでは、高性能なマイコンを採用すると開発の自由度が高まる一方で、製品コストが上昇します。逆に、コストを抑えすぎて性能に余裕がないと、処理能力不足やメモリ不足によって機能追加や改善が難しくなり、最終的に再設計が必要になる場合もあります。そのため、現在の要求仕様を満たしつつ、将来的な拡張も見据えた「適正な性能選定」が求められます。最適なバランスを見極めることが、競争力のある製品づくりにつながります。
ポイント③:部品の入手性と継続性
半導体供給が不安定な現在、優れた設計でも「部品が入らない」ことで量産が止まるリスクがあります。そのため、選定するマイコンなどがEOL(供給終了)予定ではないか、メーカーが長期供給を宣言しているかを確認することが重要です。
さらに、万一の際に置き換え可能なセカンドソース(互換デバイス)が存在するかも事前に調査しておくべきです。代替品の検討ができていれば、調達リスクを最小化し、製品供給を安定させることができます。
組み込みハードウェア開発でよく使われる言語とツール
組み込み開発の現場では、機器の特性や要求仕様に応じて最適な言語やツールが選ばれます。プログラミング言語として最も一般的なのは C言語です。処理速度が速く、メモリを細かく制御できるため、リアルタイム性が求められる組み込み機器における業界標準となっています。また、機能が複雑なシステムでは、オブジェクト指向による設計が可能な C++ が採用されることもあります。さらに近年では、プロトタイプ開発や教育用途を中心に、記述性に優れる Python(MicroPython) の活用も増えています。
一方、開発ツールとしては、プログラムの記述・ビルド・デバッグを一元管理できる 統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment) が欠かせません。IDEを用いることで、プログラム動作をターゲットマイコン上でデバッグしながら効率的に開発を進めることができます。
当社の開発実績
ブラシの回転制御 兼 摩耗管理ユニット

ワーク清掃用回転ブラシの駆動用DCモータの回転速度調整機能と、ブラシの摩耗を検知しアラームを出力する制御ユニットを開発した事例です。
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