開発・設計の勘所

正確な計測に必要なオペアンプの条件とは

Before

センサからの信号をアナログ-デジタル変換しマイコンでデータを扱うことはしばしばあると思いますが、正確な計測のためにはセンサからの微小な信号をデジタル変換に適したレベルまで増幅します。
これらアナログ信号の増幅にはオペアンプを使用しますが、誤差の少ない増幅をするには計測用途とされるオペアンプを使用します。
ではこの計測用途とされるオペアンプにはどのような特徴があるのでしょうか?

After

別途解説した「受光素子(フォトダイオード)の信号処理」にてフォトダイオードの出力を電流-電圧変換する方法を示しましたが、一般的にこのようなセンサから得られる信号は微小なものが多く、通常はオペアンプで増幅した後、AD変換を行ってデジタル化を行います。


例えばセンサより得られる電圧レベルが、0-30mVとした場合、3.3V系の回路でAD変換を行う場合、0-3.0Vとなるよう増幅するのが分解能の観点から望ましいと言えます。この場合、増幅率100倍の電圧増幅をオペアンプにより行うのですが、以下のどちらが適切でしょうか。

OP177GとNJM4558の特性比較

OP177GNJM4558備考
オフセット電圧60uV(MAX)6mV(MAX)小さい方が高精度
入力バイアス電流2.8nA(MAX)500nA(MAX)小さい方が高精度
ノイズ0.118uVrms(TYP)1.4uVrms(TYP)小さい方が出力ノイズが少ない
温度ドリフト1.2uV/℃(MAX)数値による規定なし小さい方が温度変化の影響を受けない
CMRR140dB(TYP)90dB(TYP)大きい方がノイズ除去性能が高い
スルーレート0.3V/uS(TYP)1V/uS(TYP)大きい方が動作が早い

オペアンプには用途に応じたカテゴリ分けがあり、OP177Gは高精度オペアンプ、NJM4558は汎用オペアンプに分類されます。
従って増幅後の精度に着目した場合、OP177Gの方が適していると言えます。各パラメータそれぞれの観点がありますが、今回はオフセット電圧による誤差に着目して解説します。オフセット誤差は増幅率の積で出力に反映されるため、センサなどの小信号を大きな倍率で増幅する場合、その出力精度に対し非常に大きな影響を与えます。

オフセット誤差の例
OP177Gの場合 オフセット誤差(最大値) 60uV 増幅率100倍の場合、出力誤差 6mV
NJM4558の場合 オフセット誤差(最大値) 6mV 増幅率100倍の場合、出力誤差 0.6V
上記のように選択するオペアンプによっては実に100倍もの誤差が発生してしまいます。
例えば30mVの信号を増幅率100倍にて3Vとしたい場合、OP177の場合のオフセット誤差に起因する出力誤差は6mV(0.2%)であるのに対し、NJM4558は0.6V(20%)にもなり使い物にならないことがわかります。
今回は増幅誤差に影響する典型的なパラメータとして、オフセット誤差を取り上げましたが、その他にも用途によって、ノイズ、動作速度、温度ドリフトなど何を重要視するかによりオペアンプの選択は異なってきますので、各パラメータを確認し最適なものを選択する必要があります。