受付時間:9:00~18:00(平日)
基板・ボードのリバースエンジニアリングにおける解析でむずかしいこと

電子機器の保守メンテナンスや生産中止部品への対応において、基板のリバースエンジニアリングは欠かせない手法です。しかし、物理的な回路の復元は専門機材があれば可能ですが、設計者の意図や内部ソフトウェアの挙動といった「目に見えない要素」の解析には、プロでも頭を抱えるほどの高い壁が存在します。本記事では、解析の現場で特に困難とされるポイントについて詳しく解説します。
基板・ボードのリバースエンジニアリングとは?
基板・ボードのリバースエンジニアリングとは、設計図面や仕様書が存在しない既存の基板現物から、回路構造やパターンレイアウトを詳細に読み取り、設計情報や機能を再構築する一連の技術プロセスを指します。
この技術は、主に製造中止(EOL)による保守部品の枯渇対策や、古い製品の改良・アップデートを目的として活用されています。物理的な構造の復元のみならず、設計者の意図までを紐解く必要があるため、エレクトロニクスに関する広範な知見と高度な解析技術、そして豊かな経験に基づいた専門性が不可欠な作業です。
>>基板・ボードのリバースエンジニアリングをスムーズに進めるためのポイント
回路図やレイアウト図の復元は「入り口」に過ぎない
基板のリバースエンジニアリングにおいて、最初のステップとなるのは物理的な構造の把握です。多層基板であっても、エックス線撮影やデジタイズ技術等を駆使すれば、回路図や配線レイアウトを再現すること自体は、現代の技術ではそれほど困難ではありません。
しかし、図面が完成したからといって、その基板の「設計の本質」を理解したことにはなりません。図面はあくまで「点と線」のつながりを示しているだけであり、なぜその経路を通ったのか、なぜその部品選定に至ったのかという背景までは語ってくれないからです。
ハード・ソフトにまたがる「特殊な設計」の意図
解析担当者を最も悩ませるのは、標準的ではない「変わった設計」に遭遇したときです。
特に、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携して動作するシステムにおいて、トリッキーな回路設計がなされていると、その意図を解読するのは至難の業です。
タイミング調整のための冗長な回路
信号の遅延を微調整するためだけに設けられたパターンや、ノイズ対策のためにあえて物理的に距離を置いている配線などは、一見すると無駄に見えます。これを「不要なもの」と判断して簡略化してしまうと、再現基板が正常に動作しない原因となります。
プロテクト目的の隠し仕様
コピー防止やセキュリティのために、特定の信号をソフトウェア側で複雑に処理している場合、ハードウェアの接続を見ただけでは「なぜここがつながっているのか」が理解できません。
こうした意図が不明な箇所については、下手に最適化しようとせず、リスク回避のために「そのまま流用・コピーする」のが定石ですが、不具合が発生した際に応用が利かないというジレンマを抱えることになります。
特にわかりづらいソフトウェアの「特殊な設計」の意図
基板のリバースエンジニアリングにおいて、物理的な回路よりも遥かに高い壁となるのが、マイコンの内部に書き込まれたソフトウェア(ファームウェア)の解析です。
1. バイナリデータからの解読
ICからプログラムを吸い出せたとしても、それは人間が理解できるプログラミング言語ではなく、0と1の羅列である機械語(バイナリ)の状態です。これをアセンブラに変換(逆アセンブル)して解読するには、膨大な時間と高度な専門知識が必要となります。
2. アルゴリズムの不透明性
例えば、複雑なセンサー制御や高度な演算処理を行っている場合、その計算式や条件分岐のロジックはソフトウェアの中に閉じ込められています。入力と出力の関係を外側から観察するだけでは、内部でどのような判断が下されているのかを完全に特定することは不可能です。
3. セキュリティロックの存在
近年のICには、内部データの読み出しを禁止するプロテクト機能が備わっていることが一般的です。このロックを回避してデータを抽出すること自体が物理的に不可能なケースも多く、リバースエンジニアリングにおける最大の挫折ポイントとなります。
解析の難しさは「目に見えない領域」にある
基板のリバースエンジニアリングは、単なるコピー作業ではありません。物理的な回路を追いかける「静的解析」と、実際に電気を通しソフトウェアを動かして挙動を探る「動的解析」の両輪が必要となります。
「図面は分かっても意図が分からない」「ソフトがブラックボックスで挙動が再現できない」といった課題に対し、どこまで深く踏み込むか、あるいは現物を尊重してそのまま再現するかの判断こそが、プロの技術者に求められる資質と言えるでしょう。
基板・ボードのリバースエンジニアリング事例
事例①:Z80→ルネサス製RX66Tへのマイコン載せ替え(リバースエンジニアリング)

当事例では、お客様より「長年にわたり販売していた通信モジュールに使用されていた『Z80』のマイコンが生産中止となったため、マイコンの載せ替えを行ってほしい…」とご要望いただきました。ただし、独自プロトコルの通信ボードである上、当初設計を行った方が退職していたため、解析が非常に難しい状態でした。そのような状況下でしたが、当社にて、様々な手法を検討することにより、現行のボードの解析を行いました・・・
事例②:オープンネットワーク通信ボード

こちらは、オープンネットワーク通信ボードのリバースエンジニアリング事例です。従来使用していた専用ICが廃盤となったため、リバースエンジニアリング対応が必要でした。そこで、「恒久的に使用できるICに変更した上で、設計を行ってほしい…」とご相談いただきました。
当社にて現物解析を行ったところ、ICの変更に伴い、どうしてもマイコンも併せて変更する必要があることが判明しました。そこで、当社よりHilscher製のICへの切り替えに加え、適切な新規マイコン「ルネサス RX230シリーズ」への変更をご提案しました・・・
基板・ボードのリバースエンジニアリングならお任せください!
当社では、回路図や基板データが手元に無い場合でも、現物の基板や関連する仕様書を基に、綿密なヒアリングと解析を実施します。これにより、基板の機能や動作を正確に把握した上で、お客様の要望を満たすリバースエンジニアリングを実現します。
